授業
韓国朝鮮の歴史と文化第12回
三ツ井 崇(東京大学教授)
おおよそ鎖国期以降の時代に限定し、「日本美術」とその外部との関係を問い直す。従来、歴史といえば国民国家の枠組みを自明視した各国史が支配的であり、美術史の記述もそれに準じたものが支配的だった。だがこの枠組みを近代国民国家意識が未成立だった時代にまで遡って無批判に当て嵌めるのは不適切であるとの認識が広がっている。また近代の国民文化論には、かえって文化交流の実態を覆い隠すという欠点も見逃せない。本科目では、情報の流通や授受からいかに造形が生まれ、いかに美術と呼ばれる営みが活性化されたかに注目したい。そもそも「美術」という枠組みも、「美術館」「美術学校」「展覧会」など、明治以降の欧米化のなかで制度的に確立された枠組みだった。その社会的な確立に孕む葛藤の裡にこそ、美術の生態、造形の現場があったはずである。