授業
生物の進化と多様化の科学第13回
深津 武馬(産業技術総合研究所首席研究員)
生物を熱力学で捉え、統計力学で考える
私たちは日々の暮らしで、熱と仕事を相互に変換する装置(熱機関)を利用している。熱と仕事の変換が可能であるのは、両者が同じエネルギーの一形態であるためである。一方で同じエネルギーでありながら熱と仕事には等価でない側面がある。巨視的な量の間に成り立つそうした関係は、膨大な実験を通じて確かめられてきた。そうして蓄積された知識を極めてシンプルな数学的体系にまとめあげることに成功したのが熱力学である。この講義では、初学者にとって体系の全貌が比較的つかみやすいスタイルとして、エントロピーを出発点として熱力学を演繹的に導いていくスタイルを採用する。ただし、熱力学の生物、物理、化学に関わる現象への応用を考え、分子論との繋がりについても配慮する。