
授業
市民生活と裁判第10回
川島 清嘉(川島法律事務所弁護士)
日本は長きに渡る経済の転換期を迎えている。都市と農村をめぐる従来の経済学には、二つの潮流が存在してきた。それは、市場の生産原理を中心として、生産性を重視した伝統的な経済学と、政府の再分配原理を中心として、平等性を重視した経済学とである。ところが、これらの日本経済の両輪であった二つの経済原理だけでは調整できない問題が、この転換期により顕著に現れている。たとえば、少子高齢化問題、産業構造転換問題、経済のグローバル化問題、さらには地域経済の衰退問題などである。これらは、経済の中心である企業、家計、政府などの経済組織で起こっているだけでなく、その周辺に存在する環境、農村、コミュニティなどで顕著に見られ、経済の生産原理や再分配原理以外にも、多様な状況に対処するために、第3・第4の原理を必要としている。この講義では、このような日本経済の都市と農村の間で、つまり中心と周辺をめぐる間で、現在どのような問題が生じているのかを追求し、その核心を明らかにし、さらにどのような解決方法があるのかを事例を紹介しつつ模索してみたい。