授業
精神看護学第14回
吉川 隆博(東海大学教授)
精神看護学は、精神科医療における看護のみならず、患者の精神的ケア、一般生活者の心の健康など、すべての人のメンタルヘルスを包含するものである。看護学領域において、人を生物学的存在として、また心理社会学的存在として捉える全人的観点は必須であり、いかなる臨床場面においても、そうした観点から提供される看護、すなわち「こころの看護」が求められている。個人の心理や身体のみに着眼するのではなく、対象を、心身両面から構成される「精神活動の主体」、他者とともに自立した、かつ相補的な「対人関係を構築していく主体」、ライフサイクルやスピリチュアルな面からは常に「成長し続ける主体」、「地域で生活する主体」として捉え、その主体の自立を促すよう支援することを目指している。さらに、看護職者には、患者ないし個人のアドボケートとしての役割が期待されることから、他者を擁護することの意味と責任を自覚し、擁護を適切に遂行する能力も不可欠である。以上を念頭に置き、本科目では、精神科医療の歴史、法制度、今日的課題、精神疾患の治療及び看護、精神科リハビリテーション及び地域における生活支援について学習する。本科目は「看護師資格取得に資する科目」である。履修対象は看護師国家試験受験希望者とする。