授業
家族政策研究第13回
下夷 美幸(放送大学教授)
市民参加の視点の移動-気候変動問題を事例として-
現代社会はリスク社会である。食の安全をめぐる問題や、先端情報技術によるプライバシー侵害の懸念、各種の事故や災害、さらには気候変動問題への対処に至るまで、さまざまな損害と災難を自分(たち)自身の意思決定の帰結、すなわち「リスク」として捉え、行動する社会に、私たちは生きている。そこで焦点となる問題の多くは、不確実性が高く、多様な利害と価値観が絡むことから、科学技術の専門家だけでは「正解」を導き出すことができない。この状況に対処すべく、ここ約四半世紀の間に、リスクをめぐる社会的意思決定への市民参加が求められ、それを具体化する数々の方法論が生み出されてきた。本科目ではこうした動向を科学技術への市民参加という切り口で捉え、その経緯と理論的背景について理解を深めつつ、豊富な具体例をもとに、リスク社会における市民参加のあり方を学習する。